著者 S.M.
男性. 東京大学医学部卒.CBT 得点率95%.IRTスコア:781.
現在は都内にて研修医をしています

目次
CBT(Computer-Based Testing)は、日本の医学部4年生を対象にした試験で、全国共通の基準で医学的知識を評価することを目的としています。医師国家試験の前段階として、臨床実習(ポリクリ・クリクラ)に進むための要件となっており、確実に合格しなければなりません。
本記事では、CBTでIRT標準スコア781(得点率95%)をとった私がどのような勉強をしていたのかを紹介させていただきます。
長文になりますので、先に簡潔にまとめておくと、「全部覚えるまで勉強する」です。特にコツとかはなく、忍耐力があれば誰でも可能だと思います。しかし、教材選びやスケジュールなど、これからCBT対策を開始する方々の参考になる部分があれば幸いです。
まず、私の学習スタイルは、
- 直前に詰め込むのではなく、余裕を持って計画的に勉強する
- 詳しい参考書を読むのが好き
- 知識のアウトプットよりもインプットを重視する
といった特徴があります。スタイルが大きく異なる人にとっては、本記事はあまり参考にならないかもしれません。
使用教材としては、
- 動画教材:medu4 あたらしいシリーズ(基礎、内科外科、産小老、救中麻公、マイナー)
- 演習教材:モントレCBT(無料)
をメインに使用しました。他、大学の講義の資料なども使いました。
私の周囲では、動画教材として「Q-Assist」、演習教材として「Question Bank」を使用している人が多かった印象ですが、私がそれらを選ばなかった理由については後述します。
こちらが私の成績表です。
IRT標準スコアについて簡単に説明しますと、CBTでは各学生が異なる問題セットを解くため、単純な得点率では成績を比較できません。そのため、難易度を調整したIRTスコアが用いられます。厳密には異なりますが、IRTスコアは偏差値を10倍したものと考えると理解しやすいと思います。
[成績表]
近年、CBTが公的化されたことに伴い、大きく2つの変更点がありました。
- 合格基準がIRT 396に定められた。こちらは、偏差値39.6相当と考えると、平均の50を遥かに下回っており、合格自体はそこまで大きなハードルではないことが分かると思います。
- 自分のIRT標準スコアや得点率が公表されないようになった。以前のように、得点率○%といった数字を目標に勉強することはできなくなりました。こちらは少し残念ですね。
では、どのようなモチベーションでCBTに臨むべきでしょうか?
私の考えでは、「CBTは国試の最大の練習である」という意識を持つことが重要です。
CBTは医学全範囲から出題される選択式の試験であり、形式的には国試と類似しています。また、全国の医学生がちゃんと”仕上がった”状態で受ける試験は、CBTと国試くらいしかありません(もちろん各種予備校の模試が存在しますが、模試後に追い込みをかける人も多いですし、なにより緊張感が違います)。
そのため、得点率が公表されず合否しか分からなくなったとしても、しっかりと手応えを感じながらCBTを合格した方が、2年後の国試も自信を持って臨むことができるに違いありません。CBTで高得点を目指す意義のひとつは、まさにこの点にあると考えます。
次のセクションでは、具体的な学習方法について詳しく説明していきます。
1. 国試対策を見越したCBT対策を
先述したように、CBTは国試の練習として位置づけるべきです。独立した試験ではなく、将来の医師国家試験(国試)のための基礎固めの機会と捉えましょう。そのため、CBT対策を進める際には、国試を意識しながら学習方法を構築することが重要になります。具体的には、次のようなポイントを念頭に置いて勉強を進めるとよいでしょう。
- どの教材を使用するのが最も効果的か
- その教材をどのように活用すれば、自分の学習スタイルに合致するのか
- 知識のインプットとアウトプット(問題演習)の割合をどの程度にするのが最適なのか
このような視点を持ちながら計画的に学習を進めることで、CBTを単なる試験対策ではなく、より実践的な医学知識の習得の機会として活かすことができます。
1.1 動画教材選び
近年、CBTや国試対策として動画教材を利用する医学生が増えています。各種予備校が提供する動画教材には、それぞれ異なる特徴があるため、自分に合ったものを選ぶことが肝要です。単に評判や知名度で選ぶのではなく、以下のような観点から慎重に検討することをおすすめします。
- 各教材のメリットとデメリットを比較し、どの点が自分にとって重要かを明確にする。
- 可能であれば、先輩や友人の意見を聞き、実際に使用した人の体験談を参考にする。
- 動画の視聴スタイルや講師の話し方が自分に合っているか確認する。
- 講義資料(PDFやスライド)の形式が自分の学習方法とマッチしているか確認する。
また、CBTと国試で異なる教材を使用することは、追加の費用がかかるだけでなく、学習の連続性が損なわれる可能性があるため、なるべく避けたほうがよいでしょう。長期的な視点で見ても、一貫性を持って学習を進められる教材を選ぶことが望ましいです。
私自身は、動画教材として「medu4」を選択しました。選んだ理由はいくつかありますが、最も重要だったのは、CBTと国試の教材が共通であることでした。CBTの範囲は国試に比べて狭いため、国試用の教材をすべて学習するとオーバーワークになっていまいますが、medu4ではCBT範囲を超える疾患に印がついているため、それらを飛ばして学習すれば、その心配はありません。
他には、実際にサンプル動画を見て、講師の話し方が自分に合いそうだったことも決め手の一つでした。また、講義資料が穴埋め形式になっている点も、受動的に視聴するのではなく積極的に学習に取り組む助けとなり、理解を深めるのに役立ちました。
私の周囲では、「Q-Assist」を選んだ人も多かった印象があり。大変人気のある教材です。私が「Q-Assist」を選ばなかった理由は、CBTと国試で動画が分かれている点、講義資料がややbusyで復習しにくそうな点、講師の話し方にややクセを感じた点でした。もちろん、これは完全に個人の好みの問題です。教材を比較して選ぶ際に重要なのは、「6年生の最後までストレスなく使い続けられるか」という観点だと思います。
結局のところ、動画教材選びは個人の学習スタイルや好みによる部分が大きいですが、長期的に使用するものだからこそ、慎重に選ぶことが重要です。
ついでに、「medu4」を使い始めたあとに気付いた点も書いておきます。
良い点として、疾患が類縁疾患でまとめられ明確に章立てされている点が挙げられます。これによって、教材の目次が、そのまま頭の中の整理に使えるため、スムーズにアウトプットができるようになりました。例えば、糖代謝異常による意識障害でまず鑑別に上がるのは、内分泌テキストのChapter6を考えてDKA/HHS、 低血糖症だな、とか、末梢神経障害をきたす代表疾患は神経テキストのChapter7を順に思い浮かべればGuillain-Barré症候群、CIDP、Charcot-Marie-Tooth病、家族性アミロイドポリニューロパチー、続発性ニューロパチー(糖尿病性、ビタミンB欠乏性)などがあるな、といった要領です。
悪い点としては、まず画像が少ない点が挙げられます。CT/MRI画像や病理画像は文字で説明されても分からないので、『病気がみえる』などを補助的に用いることにしました。また、覚えやすさ重視で一部説明が簡略化されすぎている点も気になりました。こちらはCBT対策段階では我慢しましたが、国試対策段階では様々な参考書やガイドラインを参照し、自分で内容を適宜補強しました。
1.2 演習教材選び
CBT試験では過去問演習が非常に重要です。CBTはプール問題が存在するため、過去の問題や類似問題を解くことで効率的に対策できます。
国試とは異なり、CBTの公式過去問は存在しませんが、過去の受験者の記憶をもとにした問題(再現問題)が、各種問題集やWeb教材に収録されています。
私は、演習教材として「モントレCBT」を選びました。選んだ最大の理由としては、無料だからです。問題と解説の質は申し分なく、問題数も3000問以上あり不足はありません。また、専用アプリが不要で、ブラウザ上で利用できる点も魅力的でした。
私の周りでは「Question Bank」を選んだ人が多かったですが、個人的には両者の間に大きな差を感じなかったため、無料の方を選びました。どの教材を選ぶにせよ、コストと内容のバランスを考慮し、自分に最も合ったものを選ぶことが大切です。
1.3 まとめノートの作り方
CBT・国試の勉強は、基本的には暗記が中心となります。暗記を効率よく行うためには、「忘れることを前提に勉強をすること」が大事です。医学の範囲は膨大なため、到底一回で覚えきれる量ではありません。一つの診療科を完璧に覚えたと思っても、他の科の勉強をしている間に知識が抜けていきます。また、私を含め大抵の人は、CBTを終えるとその開放感で知識が半分くらい飛んでいき、国試に向けて覚え直すはめになります。しかしこれは暗記科目という性質上、仕方のないことです。繰り返し見直すことをあらかじめ予定に入れて、1周目の段階で2周目以降の復習体制を考えておくことが重要です。
具体的に注意するべきこととして2つ挙げられると思います。
- 知識を一つの媒体に集約しておくこと。ランダムな場所にメモを書き留めていては、時間が経って忘れたときにどこを見直せばよいのかが分からなくなるからです。
- すぐに見返せる環境をつくること。電車の中やふとした瞬間に見ることのできる、スマホかiPad miniなどがおすすめです。
知識を整理する方法として、以下の2つの手法が考えられます。
- すべてを講義資料にまとめる(テキストに直接書き込む)
- すべてをノート(電子)にまとめ直す
この2つ以外の方法は、知識の集約という観点からは効率が悪い可能性があるため、私はあまりおすすめしません。
それぞれの方法の長所と短所を比較すると、次のようになります。
- すべてを講義資料にまとめる(テキストに直接書き込む)
長所:手間がかからず、すぐに活用できる。
短所:手書きの書き込みは検索に対応しきれない。画像の追加にも限界がある。 - すべてをノート(電子)にまとめ直す
長所:すべての情報が検索可能になり、画像の追加も自由にできる。
短所:まとめるのに時間がかかる。また、ノート作成自体が目的化しやすい。
私の場合、CBT対策の段階では①の方法を用い、国試対策として②の方法に移行しました。このように、自分の学習フェーズに応じて適切な方法を選択することが大切です。
2. 具体的なスケジュール
ここでは、私が実際にCBT対策として行っていた勉強について書かせていただきます。改めて、使った教材は「medu4」と「モントレCBT」です。
2.1 教材の進め方の例
私の場合、CBTが11月中旬で、年始から勉強を開始しました。「medu4」は、1周目は書き込みをしながら動画を視聴し、2周目以降は動画を見ずにテキストを復習しました。CBT範囲外の疾患(medu4では⊿印がついている)については、穴埋めはしたうえで2周目以降は軽く流しました。
以下、私のおおまかなスケジュールです。
- 1~2月:基礎、メジャー科
- 3月:産婦人科・小児科・老年科
- 4~7月:大学の試験科目に合わせてメジャー科2周目、救急、マイナー科、中毒・麻酔
- 8~10月:公衆衛生、メジャー以外2周目
- 10月中旬:モントレ開始、演習に合わせて3周目
夏は東医体や合宿などがあり思ったように勉強ができなかったため、結果的に1月から勉強をしていて正解でした。3年の冬などなるべく早い段階から、動画のコマ数を数えて、見終わるのに何日かかりそうかの見当をつけておくのが賢明だと思います。
また、私は知識が十分に備わった状態になって初めて問題演習に進むタイプなので、モントレの開始が試験1か月前になってしまいました。かなり遅いほうだと思いますし、実際「全問1周+間違えた問題の復習」がぎりぎり終わったという感じでしたので、演習は本番2ヶ月前くらいから始めるのが良いかと思います。
なお、「Question Bank」と「モントレ」を両方やるべきだと言う人もいますが、個人的には問題集を複数やる必要はないと思います。高得点を取るには網羅的に知識を身につける必要があるものの、問題演習のみによってすべての知識をカバーするのには限界があります。勉強が進むに従って、自分の知らない知識を問う1問にたどり着くまでに何百もの既知の問題を解くはめになり、効率が悪くなってくるのです。演習の質を保つべく、1問解くごとに軽く周辺知識を復習するほうが、結果的に知識の漏れが少なくなります。したがって、問題集は1種類を丁寧にこなせば十分であると考えます。
2.2 知識を定着させる方法の例
覚えるべき内容は膨大なので、知識をなるべく互いにリンクさせていく意識を大事にしていました。
例えば、Crohn病の内視鏡所見を復習するとしたら、私の頭の中はこのような感じです。
潰瘍性大腸炎は連続性だけどCrohn病では非連続性のskip lesionで、部位は回盲部に好発する。ちなみに回盲部好発といえば腸結核、腸管Behçetがあった。激しい炎症で潰瘍と浮腫ができるから、内視鏡所見は縦走潰瘍と敷石像。縦走潰瘍は虚血性腸炎でも出てくる。全層性の炎症だから狭窄・瘻孔をきたしやすく、これも潰瘍性大腸炎との違い。生検したら非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫がある。
類縁疾患との対比はもちろん、似たキーワードをもつ疾患をついでに思い出すことで、記憶の活性化につながると思います。また、症候や検査所見などは、なぜそれが出現するのかという理由部分も付随して覚えることで単純暗記を回避しています。
問題演習をする際にも、時々このような復習をすることで、効果的な暗記ができると思います。少なくとも、Crohn病の所見で「敷石像」を問う問題があったら、「縦走潰瘍」や「回盲部」といったキーワードは確認しておくべきでしょう。
2.3 模試は必要か?
CBT模試は、結論から申しますと、不要です。私自身は受験していませんし、私の周りを見る限り、「模試を受けなかったから不合格だった/受けたから合格した」と言えるような人はいないように思います。CBT模試は、少なくとも合否に関係するものではありません。
それでも周りの人が受験しているから自分も受けないと不安に思う人もいるでしょうし、大学によってはCBT模試が実施されるところもあるでしょう。もちろん、模試を受験することがマイナスになることはありません。出題された問題をしっかり復習すればその分知識が身につくはずです。しかしながら、先述したように、「Question Bank」や「モントレCBT」などの演習教材には数千問の過去問が収載されています。それらを完璧にこなし終えた人ならまだしも、過去問演習がまだ中途半端な人が、更に模試を受けていたずらに問題の数を増やすことに意味はありません。
さらに、CBTは大学入試とは異なり、人と競り合う試験ではありません。それぞれが異なる320問のセットを解くので、「自分だけ模試に出た問題を知らない」状況は大して不利ではありません。また、自分の位置を確認する目的でも、「モントレ」や「Question Bank」の正答率を見れば十分です。
2.4 直前期の過ごし方
直前期は、変に緊張しないよう、精神のケアが大事だと思います。CBTは合格率が95%を超える試験です。熾烈な大学受験を乗り越えているからこそ、どうしても周りを倒さないといけないという気持ちになりやすいですが、CBTは友達と手を取り合ってみんなで合格する試験だという意識で臨みましょう。
もしかしたら学科同期に「寄生虫の卵マスター」がいるかも知れません。それを見て焦って寄生虫の参考書を見る必要はありません。そのようなマイナーな問題は合否を分ける一問になり得ないからです。また、そういう人は意外と、Fallot四徴症の4徴を即答できなかったりします。最後の数日は、重要な知識が確実に身についているかどうかの確認に多くの時間を割くのがいいと思います。
3. まとめ
本記事では、CBTで高得点を取得するための具体的な学習方法やスケジュール管理、教材の選び方についての一例を紹介させていただきました。
CBTはテキストの知識の90%を覚えられていれば90%が取れる試験ですから、結局するべきことは、計画的に学習を進め、丁寧に教材をこなし、知識を確実に定着させていくのみです。適量の問題演習と、質の高い復習が、安定したパフォーマンスへの鍵です。短期間の詰め込みではなく、長期的な視点を持って学習を進めることが、CBT本番での高得点獲得だけでなく、その後の国試対策にも役立つことでしょう。





